最近のハイスペック住宅について検証してみようと思います。
まずは検証する住宅のスペックについて説明します。日本住宅性能表示基準に基づくと以下の性能指標があります。
01構造 ;耐震等級,耐風等級
02火災時の安全 ;感知警報器、耐火時間
03劣化の低減 ;防腐防蟻、通気換気措置
04維持管理への配慮;給排水設備の点検口、地中埋設の有無
05温熱環境 ;断熱性能、一次エネルギー消費量
06空気環境 ;VOC発散量、換気措置
07光・視環境 ;窓の多さ
08音環境 ;サッシ等の遮音性能
09高齢者等への配慮;バリアフリーの程度
10防犯 ;開口部の侵入防止対策
住宅性能評価を行う場合、最大これら10項目について評価することが出来るのですが、一般には構造・劣化・維持管理・温熱の4つのみを評価することが多いです。
今回は「01構造」について取り上げてみます。これは一番分かり易いのですが、この評価基準の最低基準は建築基準法です。建築基準法で定める構造の基準とはどのレベルでしょうか?
まず建築基準法では、地震、風、雪の3点について検討を行います。地震力に対してどの程度構造を強くする必要があるのでしょうか。
簡単に表現すると、住宅を基礎からごっそり持ち上げて、基礎を支えた状態で横にしたときに、何とか壊れない程度の強度を持たせるのが建築基準法上の最低基準(耐震等級1)です。地震力をガルで表現しますが、おおよそ1000ガルに耐えられると言うことです。400ガルの地震波が建物に対して1000ガル程度の影響を及ぼします。400ガルは震度6強レベルの強さとなります。ここで重要なのは「何とか壊れない」の部分です。言い換えれば壁にひびが入ったりすることは受け入れる必要があります。まったく壊れないレベルはどの程度かというと、200ガル程度と言うことになります。
次にどうやって耐震性能を確保させるのか?と言うことになってきますが、住宅性能評価においては、バランスの良い耐力壁(耐震壁)の配置、十分に強い水平構面(床や・屋根面の強度)、梁端部の接合方法のチェックをザックリと行えば良いことになっています。
このザックリの部分が重要で、建物を重たい建物、軽い建物の2つに分けて床面積に応じて地震力を概算するのです。タイルを張ったり、間仕切りが多かったり建物によって地震力は大きく変わるものなのですが、それをひとくくりにして計算してしまうからザックリとした計算「壁量計算」なのです。
ではザックリしていない計算はというと、それが「許容応力度計算」と呼ばれるものです。壁や屋根、床の構成に応じて個別にその重さを求め、ある程度信頼性の高い地震力を求め、それに対する強度が十分であるかどうか検証します。
「壁量計算」、「許容応力度計算」のどちらで検証しても良いというのが現在の建築基準法です。二つの検証方法を比較すると、壁量で2倍の差が出ることもありますが、それでもどちらの検証方法も合法なのです。
次に耐震等級について説明します。先に述べた検証法にて求めた最低限度の構造耐力を1としたときに、1.25の強度を持つ家が等級2、1.5の強度を持つ家が等級3になります。ご要望とあれば等級3以上の強度を持たせることも出来ます。
最後に耐風等級について。木造住宅の場合、鋼板製の屋根・外壁の家などは比較的軽く作ることが出来るので、地震力より強風による力の方が強いこともあります。3階建てになってくると、ほとんどの場合風力の方が強くなってきます。これは木造の特徴的な部分で、鉄筋コンクリートや鉄骨の住宅はまず地震力の方が強いです。
風力の検証の仕方は、ザックリ言うと横から見た建物の大きさに風圧の係数を掛けて横方向の風圧力を求め、後は地震力と同じように計算します。建物の耐風強度がギリギリであれば耐風等級1、1.2倍の強度があれば耐風等級2となります。
地震に対する強度が注目を受けますが、平面的に細長い形状の建物、もしくは背の高い建物は耐風等級に注意すべきだと思います。